若年層に海賊版の利用抑止を呼びかけ
る情報モラル動画制作について
大分県と大分県立芸術
文化短期大学
取り組み

今、時代はZ世代からα世代へ。デジタルネイティブな若者の目線で、同世代に対してどのようにコンテンツへの理解を深め、海賊版の利用を抑止できるか。大分県の情報モラル教育の取り組みを紹介します。

  • はじまりは、1通のメールから

    2022年9月下旬、CODAに1通のメールが届きました。
    メールを送ってくださったのは大分県立芸術文化短期大学の野田佳邦(のだ よしくに)准教授。野田先生は情報科学、知的財産学をご専門とされており、大学では情報リテラシー教育、情報モラル教育を研究、指導されています。その野田先生から「ゼミで制作した海賊版に関する動画教材が完成し、公開されました。(中略)この動画は大分県地域連携プラットフォーム推進事業として、ゼミで制作したキャラクターを活用し、学生たちで議論しながらキャラクター設定およびシナリオ制作を行いました。(中略)若年層の海賊版利用については教育現場で考えさせられることが非常に多く、このような動画を制作しましたことを、お知らせさせていただきました」とメールをいただいたのでした。

  • ぜひお話を伺いたい!いざ大分県へ…

    早速動画を拝見したところ、若者目線で作られているだけでなく、実感しにくいネットでの違法行為を例を用いて現実世界に一旦置き換えて考えてもらうなどその説明は丁寧かつ工夫に富んでおり、若者に共感と考えるきっかけを築く素晴らしい教材・取り組みである、と多くのCODA職員から反応が出たのです。社会的にも意義のある取り組みについて、実際に制作に携わられた野田ゼミの2年生の皆さんと野田先生に、お話を伺いました。

実際に制作された動画がこちら

”推し”は正しく応援しよう!【星野夜めま】

【大分県/情報モラル】
”推し”は正しく応援しよう!【星野夜めま】

星野夜めま

大分県立芸術文化短期大学の野田ゼミ公式キャラクター。動画の中ではネットでの違法行為を身の回りにあるものに置き換えるなど、わかりやすい説明で「海賊版」について啓発しています。

参加者

  • 大分県立芸術文化短期大学情報コミュニケーション学科 野田研究室

    大分県立芸術文化短期大学情報コミュニケーション学科 野田研究室

    野田佳邦先生/ゼミ生(2年生・11名)
    大藏さん、河野さん、黒木さん、桒鶴さん、後藤さん、佐田さん、佐藤さん、田中さん、平野さん、古門さん、横松さん

  • CODA

    CODA

    青山、湯口

01

海賊版サイトや著作権・知的財産への興味、野田ゼミに入ったきっかけなどについて

著作権や知財について知らない人に分かりやすく伝える、ということはすごい難しい

  • ゼミ生
    あの…大変申し訳ないのですけど、私自身、過去に知らずに海賊版を使っていたことがあって。周りの友達が使っていたというところからサイトとかアプリというのを知って使っていたんです。今は大学で著作権や知財について学んでいますが、今度は(今回のプロジェクトで)普段著作権や知財について知らない人に分かりやすく伝えるということはすごく難しいなと思いました。
  • CODA
    すごく納得です!私事で本当に恐縮ですが、私は5歳の娘がおりまして、「これやっちゃダメ」「あれやっちゃダメ」と親が言うものの、やっぱり「なんでダメなのか」が分からないことは本人に響かないんですよ。本人が「なんで」を理解できるかどうかというのは本当に重要で、親の私は日々困っていますが(笑)、今伺ったお話は「そうだよなぁ」とすごく感じます。
  • ゼミ生
    私は昔からアニメを見ることが好きで、たくさん見てきたんですけど、小学生の頃とか違法なサイトで見てしまっていたんですね。こっち(大分県)だと放送されないものが多くて…
  • CODA
    あぁ、そういうことですか!
  • CODA
    それはあるかもしれないですねぇ。
  • 野田
    先生
    それは私もよく聞きます。
  • ゼミ生
    大分には放送局が3つあって、私の出身は宮崎なんですが、(宮崎の放送局は)2つだし、昔は全くサブスクとかなかったので、そもそも全然アニメが見られませんでした。海賊版の何がダメか、どうやって儲けているかも知りませんでした。クリエーターの方にどのような被害が及ぶか、ということも分からなかったので、利用してしまっていたんですね。今はやっていないですけど。あの頃見ていたサイトってどうなっているんだろうと思って、この前「作品名 動画 サイト」で検索したんですよ。昔はそれですぐ出てきていたんですね。でも今って全く検索結果に出てこなくて、それくらい海賊版の撲滅の動きがすごく進んでいるんだな、って思いました。
  • CODA
    海賊版サイトは結構閉鎖されているのと、CODAの事業の一部として検索結果を出さないということ、また広告を違法なサイトに出ないように広告出稿の抑制をやっています。
  • ゼミ生
    私は元々二次創作の分野に興味があって、1年生の時に野田先生の授業で権利について学んだことで気をつけようという意識が出てきた部分もあります。
  • CODA
    今の時代、簡単に自分で動画を作ってアップできますし、同人誌作っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが。
  • ゼミ生
    (自分と同じように)気をつけようと、そういう人がもっと増えるように、分かりやすい作品になるといいなと思って、そこは今回の動画制作で気をつけたところです。
  • CODA
    友人に「大学で何をしているの?」と聞かれた時に、著作権や知財の勉強をしているよと答えると「法律の勉強」をしていると思われて「そんなに難しいことをしているんだ……」と反応されてしまう。法律(の観点)もですけど、一方で著作権や知財はリテラシーの観点もあって、どのような学びなのかが分かり難いのだと思います。

「著作権」自体に興味を持っていなくても、「私が海賊版を使ったらどうなるかな」っていうのを少しでも考えてくれるきっかけになるような動画が出来たのはすごく良かったなって思います。

  • ゼミ生
    自分とほぼ同じ年くらいの人に向けて何かを作る、自分が何かを教える側の立場になることがなかったので、初めての経験でした。でも立場が近いからこそ、先生が作ってくれた元の台本から、みんなで意見を出したものの方が、ちょっと親しみやすさが出た気がするので、そこが良かったと思います。
  • ゼミ生
    先ほど野田先生がこの前取った動画視聴前と視聴後のアンケートの結果を見せてもらったんです。動画視聴前後で海賊版を使う意識について最初から「特に悪いとは思わない」人の割合は結局動画視聴後も変わっていない、ということで、元々知財や著作権に興味がある人、ない人と、今まで当然に当たり前に使っていて今更どうこう言われても響かない人がいるのかなと思ってて。自分が(知的財産や著作権について)どうやって教えたらいいか分からなかったけれど、実際に目に見える形=動画制作を通して、「一目で分かる」ってすごく大事だなと感じています。
  • ゼミ生
    私も(動画の)アンケート結果を見た時に、「一番記憶に残ったこと」の回答に、自分たちが考えた例が挙がっているのがあって。例を考えることで多少記憶に残ってもらえるなとも思ったし、自分のことに置き換えて想像ができるから、それで分かりやすいのかなとも思いました。例を考えるのってすごく難しいですけど、やっぱりそれが大切だなと思いました。
  • 野田
    先生
    アンケート調査については、海賊版を「よくない」と思う人の割合が、動画を見る前は5割くらいです。「わからない」が結構多くて約4割、「特に悪いと思わない」が7%くらいでした。この7%は動画視聴後も割合がほぼ変わらないのですが、「わからない」人が「よくない」になったというところが。
  • CODA
    先ほど別の学生さんが仰ったように、元々やっぱり「わからない」んですね。分からなくて海賊版を使ってしまっていたと。
  • 野田
    先生
    はい。
  • CODA
    そうすると、具体の例を示すことでちょっとでも海賊版について「わかる」ようになると「あぁ、これはよくないことなんだ」と理解して海賊版を利用する人もおのずと減ってくるのかもしれないですね。
  • ゼミ生
    元々興味がない人にどう伝えるか、どんな人にでも分かりやすく伝えるにはどういう切り口で伝えたら良いのかとか、どういう表現を使ったら良いか、というところはすごく動画作りで気をつけていた点ではあります。私は漫画や本、映画とか色々なコンテンツに救われて生きているんですけれど、だからこそコンテンツのために私が何かできることがないかなとずっと考えていたんですね。でも一学生、一消費者としてはコンテンツに対してしっかりお金を払うということしかできなくて、一方でお金を払うことさえしていない海賊版ユーザーがいるわけじゃないですか。その問題にすごく憤りを感じていたタイミングで、今回この海賊版の周知動画作りの企画に携われたのはすごくラッキーだったなって個人的に思っています。私と同じようにコンテンツに対して何か出来ることがないかなって考えている人は結構多いと思うんですけど、海賊版を使わないことも消費者が出来ることの一つだと思うので、ファンの人に海賊版について考えるきっかけ作りが出来たこともすごくうれしかったなって思っています。
  • ゼミ生
    私自身はアニメとか漫画とかに全く興味がなくって、だから海賊版の話を正直あんまりよく分かってなかったんですよ。自分には関係がないことだと。でも本当はもっと海賊版って身近にあるものだっていうことが分かったから、アニメが好きな人はもちろんだけど、そうじゃない人たちにとっても意外と近くにある(問題)ってことを、親近感を感じてもらいながら見てもらえるように、より分かりやすい表現を伝えられるよう取り組みました。
  • CODA
    私、完全に先入観でここのゼミに入ってこられた方は皆さん漫画やアニメ、音楽がすごいお好きなんだろうと思っていたんですけれど……
  • 野田
    先生
    9割くらいはそうなんですけれど。
  • CODA
    貴重な1割が(笑)!でも、そういう方がいるというのが大事ですよね!
  • 野田
    先生
    そう、みんながオタクだったらそっち寄りになっちゃうので、それを止めてくれる役割を……
  • (一同笑)
  • 野田
    先生
    (その役割が)必要でしたので、すごく頑張ってくれました。
  • CODA
    この動画が今後高校とかでいろいろな人に見てもらうとなった時に、同じように、ここのゼミは9割ですけれどそれがもしかしたら7割か6割しか漫画やアニメに興味がある人がいないかもしれない。興味ない人でも分かりやすいものをという視点は本当に大事ですね。
  • ゼミ生
    動画の中のセリフで「現実世界に置き換えてみて」って言葉があるんですけど、「多分偽物だけど安いからいいや」と元から危険性を分かっていない人に、今まで教科書だけではよく分からなかったことを私たちの周りによくある出来事に置き換えてみんなが分かりやすいと思ってくれる動画を制作できて良かったなって思って。よく学校で生徒が体育館とかに集められて、講師の方が興味のない動画やパワーポイントを使う講演って、よく分からないし、眠くなっちゃうことが多かったんですよ(笑)。
  • (一同笑)
  • ゼミ生
    「著作権」自体に興味を持っていなくても、「私が海賊版を使ったらどうなるかな」っていうのを少しでも考えてくれるきっかけになるような動画ができたのはすごく良かったなって思います。
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