一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)
後藤健郎
現在、文化庁で検討されている「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関して、各方面から様々な御意見が表明されています。長年に渡り、海賊版対策のフロントラインで活動を行ってきた当機構としての考えを、以下のとおり発表いたします。
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いま海賊版ビジネスにより、わが国の著作権法を無視し、コンテンツに対する敬意など一切なく、暴利を追求する者が世界規模で存在する現実にあります。これら被害は極めて深刻であります。
インターネットの一般ユーザーの皆様の表現の自由等には十分に配慮しつつも、実効的な対策を講じることが急務であります。 - 報道によりますと、現在の政府案では、①主観的な要件を厳しく設定し、違法だと知らずにダウンロードしてしまったユーザーが法的責任を問われないといったことを確実に担保するとともに、②刑事罰は常習的に違法ダウンロードを繰り返すなど悪質性が高い事案に限定がされており、ユーザーの表現の自由等が害されないように十分に配慮されています。
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「原作のまま、作品全体をまるごと複製する行為に限定すべき」、「権利者の利益が不当に害される場合に限定すべき」といった意見もあるようですが、そのような内容は、海賊版業者にとって容易に回避することが可能であり、海賊版対策への効果が著しく低下してしまうと考えています。ついては、そのような限定は行うべきでないと思います。
海賊版ビジネスは法の抜け穴を突いてくるため、そのような要件を課すことにより、表紙だけ外したり、一部を切り取ったり、データを二つに分ける等して、ユーザーに「これは適法であり、安心してダウンロードしてください」といった誤ったアピールを招く事態が容易に想定されます。わが国のコンテンツを守るという意味から、作品全体のダウンロードだけ規制するのでは到底のことながら不十分であります。
また、今回の対象となるのはあくまでも違法にアップロードされた作品であり、現在の法制度においても本来はインターネット上にあるべきではないものになります。
そして、今回の法改正は、そのように本来存在するべきでない違法なものを違法だと知りながらダウンロードする行為を対象とするというものであり、言うなれば、「海賊版ビジネス運営者、いわゆる犯罪者の利益になることを承知の上で、自らが無料(又は低額で)作品を見たいので、海賊版を取得する。」という行為を対象とするものであり、その内容は正当なものでありますし合理的なものと考えています。 -
なお、権利者によっても意向も様々であり、違法なアップロードからのダウンロードを許容される方もおられます。そういった皆様は、個別にその旨を対外的に発信していただければ、ユーザーは安心してダウンロードを行うことが可能です。
一方、海賊版ビジネスを助長する、このようなダウンロードを望まない権利者が集合体となっているCODAとしましては、一部の権利者の意向によってわが国の法的措置の内容が後退することがあってはならないと考えます。行政府・立法府においては、海賊版業者、そして海賊版ビジネスと対峙し排除することに尽力している者たちの意見を、しっかりと汲み取っていただきたいと思います。
以上
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