2023年2月9日、中国・北京において、CODAと中国版権協会との共催により、著作権保護に関するトレーニングセミナーを開催しました。
トレーニングセミナーは、2005年より世界各地域の取締機関職員や法曹関係者などに対し、著作権や日本コンテンツに関する情報を提供することで、当該国における日本コンテンツの海賊版取締りの実効性を高めることを目的とした文化庁委託事業として実施してきましたが、最近では世界各地域と日本との間で相互に著作権保護にかかわる情報や意見を交換して、連携を深める有効な場となっています。これまで、北京、香港、台北などの東アジア地域のほか、最近は、ジャカルタ、バンコク、クアラルンプール、ハノイなどのASEAN地域などを対象に、現在までに34カ所の開催地で124回以上、延べ8,800人以上に対して開催しています。
今回で14回目の開催となる北京でのセミナーは、「日中著作権保護セミナー」と題し、現地のリアル会場に加えて、日中両国から初めて一般のお客様のオンライン参加も可能としたハイブリッド形式により開催されました。現地会場では政府機関関係者、権利者、業界団体、一般企業関係者、法曹関係者、教育関係者など約50人が参加し、オンラインではCODA会員や日本の一般の権利者他からも広く参加者を募り、また中国においてはライブ配信も行い、約600人の聴衆にご参加いただきました。
当日のセミナーでは、中央宣伝部版権管理局局長(国家版権局)の王志成氏、日本文化庁審議官の中原裕彦氏、在中国日本国大使館公使の貴島善子氏、中国版権協会理事長の閻暁宏氏から、開催にあたりごあいさつをいただきました。
続いて、華東政法大学副教授の陳紹玲氏から、中国における「『著作権法実施条例』改正に関するいくつかの問題点」と題して権利体系の具体化などの「著作権法」改正に対する講話をいただき、文化庁著作権課国際著作権室国際著作権参与の大出萌氏より、「日本における近年の著作権行政の動向」と題して2021年の著作権法改正や現在審議中の著作権制度について解説をいただき、中央宣伝部版権管理局法執行監管処処長の趙傑氏から、「中国におけるインターネット著作権保護の新動向」と題して2022年に実施された著作権保護キャンペーンの成果や今後の展開についてご報告をいただきました。そしてCODA代表理事の後藤健郎より、「CODA国際連携・国際執行の強化について」と題して深刻な海賊版の侵害実態やその対策の成果、それらによる国際連携・国際執行の必要性について提案をさせていただきました。
また、テンセント法律専門家の臧雷氏が、インターネット上の著作権に関わる技術革新とその保護に関するプレゼン、泰和泰弁護士事務所弁護士の聶穎氏が、「漫画BANK」を例にした中国の行政による日本の著作権保護などについて講演を行い、日本・中国の権利者および関係者に向けて、中国においていかに権利を保護するかといった最新の情報提供をいただきました。
講演終了後には、弁護士の聶穎氏に対して、「国境をまたぐ侵害に対し実際に権利行使をする際のアドバイスはあるか」、「実際の証拠保全の方法とは」、「証拠の立証の効率的な方法とは」など熱心な質問が寄せられ、版権協会理事長の閻暁宏氏も参加し応答が行われました。
最後に、中国版権協会副理事長兼秘書長の孫悦氏より、「中国と日本の双方にとって、インターネット上の著作権侵害に対し共通の認識を持つことができた。両国の著作権保護の分野で新しい協力関係が期待できる貴重な機会となった」との総括をいただき、国境を越えて拡大するオンライン侵害に対する協働への期待が寄せられました。
この活動は、文化庁受託事業の一環として行われました。