2012年3月1日、台湾の保護智慧財産権警察(IPR警察)大隊は、台北市内とその周辺に所在する海賊版販売店3店舗の一斉取締りを実施しました。IPR警察では昨年11月より、CODAの要請に基づいて日本コンテンツの海賊版取締りを継続しており、今回を含むこれら一連の取締りの結果、4カ所の夜市で露天商を含む5店舗を摘発し、それぞれの経営者を逮捕、合計で約1万枚の日本コンテンツの海賊版DVDが押収されました。
今回の一斉取締りは、台湾において蔓延する日本のテレビ番組の海賊版を排除する目的で実施されたもので、台湾全土に広がっているとみられる日本コンテンツ専門の海賊版販売店に対象を絞った、初めての取締り案件となりました。
3月1日に行われた家宅捜索では、台北市内の2店舗と新北市内の1店舗が対象となりました。このうち台北市内の2店舗は、観光客などで賑わう「饒河街夜市」に所在しており、夕刻、店舗の営業開始を確認して実施された強制捜査は大勢の買い物客等が見守る中で粛々と行われ、このうち1店舗では「坂の上の雲」や「家政婦のミタ」、「深夜食堂 第二部」などの最新の日本ドラマを含む、約6,500枚の海賊版DVDが押収されました。
また、同じ夜市で行われたもう1店舗の家宅捜索では約1,000枚、新北市の「楽華夜市」で行われた海賊版販売店での家宅捜索では約500枚の日本コンテンツの海賊版DVDが押収されました。
IPR警察では、CODAの要請に基づいて、昨年11月より日本コンテンツ海賊版の集中的な取締りを開始し、同月に台北市内の「通化街夜市」で露天商を摘発して約1,900枚の海賊版を押収したのを皮切りに、12月には同市内の「士林夜市」で海賊版販売店を摘発、約900枚の海賊版を押収していました。
なおこれらの取締りは、CODAと業務提携する、現地の著作権保護促進・侵害監視を目的とする公益財団法人「台湾著作権保護基金会」(TFACT)の協力を得て実施されました。
3月3日には、これら一連の取締りの結果を報告するため、新北市のIPR警察大隊本部で記者発表が開催されました。記者発表にはCODAから後藤健郎専務理事が出席し、同警察への謝意を述べるとともに、日本コンテンツの海賊版蔓延の背景などを説明。今後も引き続き、同警察およびTFACTとの連携を深め、台湾における日本コンテンツの権利保護を進めていくことを説明しました。この様子は、現地メディアのみならず、記者発表に出席した日本のテレビ局、新聞社、通信社により広く日本でも報道されました。
CODAでは、台湾での具体的な侵害対策活動を開始した2004年頃と比較して、ここ数年は、TFACTやIPR警察の積極的な摘発の継続によって、日本コンテンツの海賊版も減少していると認識していました。
しかし一昨年に、現地において日本のテレビ番組を中心とした海賊版が蔓延している状況を確認したため、TFACTとともに内偵調査を実施した結果、日本コンテンツを専門で取り扱う海賊版販売店が多数確認されるなど、被害が甚大であることが判明しました。
TFACTの調査によると、台湾全土では約60店舗の日本コンテンツ専門の海賊版販売店が存在しており、市場に出回っている海賊版は約30万枚と推定されています。また、製造工場については2、3カ所に集中的に存在していると考えられており、製造過程にある海賊版ディスクも合わせると、100万枚以上の海賊版が存在していると推測されています。
またテレビドラマの場合、日本での放送終了後2週間程度で台湾の市場に海賊版として現れ、1枚当たり100台湾ドル(約300円)前後で販売されています。
このためCODAでは、日本の放送事業者である各権利者への情報提供等を行い、その結果、CODA企業会員である日本放送協会(NHK)、TBSテレビ、日本テレビ放送網、フジテレビジョン、讀賣テレビ放送の5局の要請を受けて、現地における具体的な対応策に関する諸準備をスタートしていました。
CODAでは、この一斉取締りを非常に大きな成果であり、海賊版の製造業者、流通業者に対する今後の大きな抑止力になることを期待しています。しかしながら、今回の取締りのみで台湾の市場が一気に正常化するものではなく、この成果で如実になった被害の状況は「氷山の一角」にすぎないとも考えています。実際、昨年末に行われた取締り直後には噂を聞きつけて営業を休止するなど、鳴りを潜めていた他の海賊版販売店も、この2月の旧正月前後には次々に営業を再開したことが確認されています。今後も、日本コンテンツの海賊版への対応は、長期的視野に立ち、定期的かつ継続的に行なっていく必要があるでしょう。
CODAはこれまでも、トレーニングセミナー(真贋判定セミナー)等を通じてIPR警察とは良好な関係を構築してきました。今後も、市場調査などを引き続き行い、TFACTとの連携のもとに、効果的な事件取締りをIPR警察に要請していきたいと考えています。