著作権侵害 日本人向けアニメの最大級海賊版サイト「B9GOOD」運営者ら4人を中国で刑事摘発

 中国江蘇省の公安局は、2023年2月14日、日本人向けアニメの海賊版サイトとして最大の規模を誇る「B9GOOD」を運営し、権利者に無断でアニメ等の作品を配信した疑いで、重慶市在住の無職男性A(33歳)の身柄を拘束し、取り調べを行いました。また、2月18日~3月21日にかけ、同サイトを通じてアニメを中心に映画、ドラマなどの作品を権利者に無断で配信していた成都市在住の会社員女性B(30歳)、上海市在住の無職男性C(38歳)、福建省福州市在住の自営業女性D(34歳)に対する家宅捜索が行われ、それぞれ在宅にて取り調べが行われています。主要関係者の刑事摘発、使用したサーバーの解析捜査を行ったのち、同サイトは3月27日に完全に閉鎖されました。
 日本(CODA)からの刑事告発で中国の海賊版サイトの運営者やアップローダーが刑事摘発されたのは今回が初めてのこととなります。B9GOODは日本のコンテンツが日本語で表示されており、日本からのアクセスが約95%を占め、日本人向けアニメの海賊版サイトとして最大の規模を誇っていました。このような悪質なサイトについて、中国で刑事手続きによる本格的な摘発が行われたことは大変画期的なことです。

 今回、CODAに刑事事件化の要請を行ったのは、株式会社アニプレックス、株式会社テレビ東京、東映アニメーション株式会社、東宝株式会社、日本放送協会(NHK)、株式会社バンダイナムコフィルムワークスの計6社で、そのほか複数のCODA会員社(※1)も、B9GOODに掲載されていた作品の被害確認で調査協力を行いました。

 男性Aは、保釈保証金を納付し3月19日に保釈されました。公安の調べによると、男性Aはサイトの運営およびアップロードを認めています。男性AがB9GOODの広告から得た収入の一部で購入していた400万元相当(約8,000万円)の住宅はすでに公安に差し押さえられていますが、公安は男性Aがこれまでに600万~700万元(約1.2億~1.4億円)を得ていたと見て裏付け捜査を進めています。また男性Aは、女性B、Dとは面識があり、報酬を支払ってアップロードさせていたこと供述しており、女性Bが3万元(約60万円)、女性Dが8万元(160万円)の報酬を得ていました。
 男性Cは、ほかのストレージサイトに違法コンテンツをアップロードし、B9GOODからリンクで誘導、独自の広告を表示する方法で広告費を稼いでおり、これまでに30万元(約600万円)の収入を得ていました。
 今後被疑者らは、起訴され刑事裁判手続きに入る予定です。CODAは厳重な刑事処罰を求めていきます。

 B9GOODは、過去には「B9DM」というサイト名・ドメインで2008年に開設され、その後メインのサイトの名前・ドメインを「B9GOOD」に変更して現在まで運営を続けていました。
 Web解析ツールSimilarWebによると、2021年3月~2023年2月までの2年間で、b9good.comへの合計アクセス数は3 億回以上に上り、多い月では1カ月間で1,581万のアクセスを集めていました(※2) 。
 2018年には、アメリカのモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)が米国通商代表部(USTR)の「悪名高い市場」報告書に関する情報提供としてB9GOODを名指しするなど(※3) 、世界でも注目を集める悪質なサイトの1つでした。
 また、多くのリーチサイトから誘導される「侵害コンテンツのリンク元」としても機能しており、2022年9月29日に北海道警により摘発されたリーチサイト「全話一気に視聴するならココ!!(アニメ)」も、B9GOODにアップロードされていた動画へリンクをしていたことが判明しています。さらに同サイトからダウンロードした動画を、別のUGCサイトで再投稿する例が確認されたことも少なくなく、日本コンテンツの侵害に与えた影響は多大なものでした。

 CODAが運営する「自動コンテンツ監視・削除センター」では、2016年10月からB9GOODに対する削除要請を開始し、現在までに約1万件の削除要請を行っています。2016年10月には、中国の「剣網行動」(※4) に当時「B9DM」として運営していた同サイトについての行政投訴の申し立てを行うなど、さまざまな対策を実施してきました。

 今回の刑事摘発は、CODAが2021年度より経済産業省の支援を受けてスタートした、海賊版サイトの運営者を特定するための「国際執行プロジェクト(CBEP)」の成果です。CBEPでは、エシカルハッカーなどサイバーセキュリティ専門家や国際法律事務所などと連携し、デジタルフォレンジック調査やオープン・ソース・インテリジェンス調査を実施しており、ここから得られた情報が今回の運営者の特定に繋がりました。
 さらに、2022年1月には、CODA北京事務所が中国でNGO法人として認められ、事業内容として「会員企業の正当な権利保護」が正式に認められたことから、日本の権利者に代わり当事者として告発することができたなど今回の刑事事件化もスムーズに進めることができました。
 今回の取締りでB9GOODの更新がストップして以来、インターネット上では代替サイトとして複数の海賊版サイトが隠語を用いて紹介されており、CODAはこれらサイトに対しても調査を進める予定です。

 CODAでは今後の取り調べや刑事裁判で明らかになる事件の詳細について注視し、今後の捜査についてもCODA北京事務所を中心に積極的に協力してまいります。

B9GOODトップページ(2023年3月10日確認・一部画像加工)
日本の視聴者によるアップロードの要請
(2023年3月24日確認)

※1:エイベックス株式会社、株式会社ADKエモーションズ、株式会社KADOKAWA、株式会社講談社、株式会社集英社、株式会社小学館、株式会社小学館集英社プロダクション、松竹株式会社、株式会社スタジオジブリ、株式会社TBSテレビ、株式会社手塚プロダクション、株式会社テレビ朝日、東映株式会社、株式会社トムス・エンタテインメント、日活株式会社、一般社団法人日本音楽事業者協会、日本テレビ放送網株式会社、株式会社フジテレビジョン、株式会社ポニーキャニオン、吉本興業ホールディングス株式会社、讀賣テレビ放送株式会社、株式会WOWOW(50音順・22社・2023年3月30日更新)

※2:2023年3月確認、SimilarWeb調査

※3:https://www.motionpictures.org/wp-content/uploads/2018/11/notorious-markets-final.pdf

※4:中国の国家インターネット情報弁公室、国家版権局、公安部、工業・情報化部の 4 政府機関が共同して実施する特別行動で、インターネット上の著作権保護及び権利侵害・海賊版を撲滅するために2005年より開始され、毎年継続して実施されている

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